[12]

「さっきの後じゃ調子良いことを言ってるように聞こえるかもしれないけれど・・・浅木が好きなんだ」

真剣な目でそう言ってくる高林先生は嘘をついているようには見えなかった

「高林先生・・・仮にも教師が生徒に告白はおかしいよ」

「それは自覚してる。本当は言うつもりもなかったんだけど、浅木が友達と遊んでるのを見て柄にもなく嫉妬してしまってさ、俺は浅木が好きなんだと自覚したんだ。それにこのまま放っておいたら浅木は他の奴と付き合うんじゃないかと思ったら・・・嫌でさ。言っておきたかったんだ」

突然ごめんと謝りながらも目は笑いもしていない。本気なのだろう

「高林先生は何を望んでいるの?俺が好きなことを知っておいて欲しいだけ?それとも付き合いたいとかそういう感情?」

「できれば付き合って欲しい」

真剣にそういう高林先生にこちらも真剣に返す。ココで茶化すのはやっぱり悪いだろう

「高林先生、ごめん。付き合うことはできないよ。将来性がないしさ」

だって、何年かしてお互い良い女の人とめぐり会ったら男同士なんて不毛な関係はすぐに絶ちたいと思うはずだ

「俺、長く続かない恋愛はしないって決めてるの」

辛い思いなんかしたくないから。

だったら初めから知らない方がいい。

「長く続かない・・・か。何故そう思う?」

逆に聞き返された。そんなの決まってるじゃない

「誰だって良い女の人と出会ったらその人の方がいいと思うよ?それに生徒に手を出すことを後で後悔するかもしれない。俺、辛いのは嫌なんだ」

いつも望んだものは手に入らないんだ

だったら望まなければいい。

「俺は後悔しないし、浅木とは運命の出会いなんじゃないかと思うんだ」

「ロマンチスト?」

運命の出会いなんて大げさだと笑う



そんなことちっとも思ってないくせに



「そう思われても仕方ないかもしれないけど、何か浅木は見ててほっとけないし、気になるんだ。それに、誰かと笑って話しているのを見ると嫉妬してしまう・・・」

真剣に言う高林先生に少し気を許してしまいそうになる

「きっと『恋』だと勘違いしてるだけじゃない?」

「勘違いなんかじゃない。俺は浅木が好きだ」

信用してもいいのだろうか?

本当に「愛」してくれて置いていかない?

「・・・先生は俺に『愛』をくれる?」

少し俯きそう聞いた

「勿論、愛してるよ。望むのならいくらでも愛してあげる」

少し今までの質問と違ったので驚いた様子だったが真剣な声でそう言ってくれた

じっと目を見て願いを言う

「俺のこと、置いていかない?」

「あぁ、置いてなんかいかないよ」

「約束してくれる?」

「約束する」

子供みたいに小指を絡み合わせる

信じてみよう。この人のことを・・・

「約束だからね」

にっこりと微笑んでみせた

「あぁ、大好きだよ。浅木」

スッと高林先生の手が伸びてきて肩を掴まれ、あっと言う間に抱きしめられていた

高林先生にとって俺との出会いが運命なら、俺にとっても運命になるのだろうか?

この人と一緒に居る時間が、楽しい時間ならいいのに・・・




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