[14]

家に帰ると楓が出迎えてくれた

「お帰り、最近遅いね」

「そう?いつもと変わらないと思うけど・・・」

玄関にある時計で時刻を確認すると18時と表示されていた

「ちょっと前まではもっと早かったじゃない。美希也、何か部活にでも入ったの?」

そう聞かれて、首を横に振りながら

「入ってないよ。でも、図書館で高林先生と話したり本を読んだりしてる」

そう言うと楓は意外そうな顔をした

「高林先生と?」

「ん?うん」

よくわからないが事実なので頷く

「そうなんだ・・・あ、着替えてきなよ。もうすぐ夕食だって」

「はーい」

返事をして自室がある二階へと上がる。

最近こんな風に楓ともちゃんと話をするようになった。ちょっとだけコミュニケーションが取れるようになったのも高林先生のおかげだと思う。

無理に意地を張るわけでもなく、気になったことはちゃんと聞くし、よそよそしさを自分がまず和らげる努力をしているのだ

今日も家族での夕食

ちょっとだけ「家族」なんだと思えるようにもなってきた

まだまだ会話は少ないほうだと思うけどね・・・



あっと言う間に金曜日も終わり土曜日になった

今日は高林先生とデートだ

待ち合わせの時間までかなりある。

とりあえずリビングのソファーに腰掛けてまた夢の世界に戻りかけていると楓が話しかけてきた

「おはよう。美希也、今日はどこかに出かけるの?」

楓にそう聞かれて頷くだけで返事をすます

まだ寝起きでちゃんと頭が働いていないのだ

「そっかー。何か昨日父さんが有名なオーケストラの公演チケットを知り合いに貰ったらしくて行こうって言ってるんだけど、一緒に行けない?」

出かける予定があることを聞いた上でそう聞いてくるということは、俺の予定をずらせないかと言うことだろう

生憎だけどオーケストラより家族の団欒よりデートを優先する

「ごめん。音楽鑑賞とかそういう気分でもないし悪いけどパス」

「そっか・・・わかった」

ちょっとシュンッとなっている楓が可哀相な気にもなる

「まだ美希也と一緒にどこかに出掛けたことも無いしさ、一緒に行けるかな?と思ったんだけど・・・興味ないなら仕方ないよね」

寂しそうに笑ってそういう

「ねぇ、明日か来週は予定ある?」

そうだ!と何か思いついたように聞かれる

明日か・・・特には予定はないかな・・・でも、久しぶりにマスターにも会いたいなーなんて考えていたら

「いや、予定があるならいいんだ!突然だし・・・」

と、楓が慌ててそういい始めたので少しその様子に笑ってから

「別に予定はないよ」

と返した

うん。マスターのところにはいつでもいけるしね

「本当?!じゃあ、遊びに行こうよ!明日にする?来週にする?」

「そうだなー・・・じゃあ、来週にしない?一週間どこに行くか考えられるでしょう?」

明日でもいいけど、何となく来週がいい

「そうだね!じゃあ来週にしよう!約束だよ、美希也」

笑顔でそういう楓に頷いた。




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