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ひたすら泣きじゃくる俺にタキは困った声で『どうしたんだよ?』とか『なにがあった?』としきりに訊ねてきてくれた

でも全て話せるわけじゃない

何も言えずにただ泣く俺に痺れを切らしたのか

『分かった!今すぐにお前の所に行くからちょっと待ってろ!』

そう怒鳴って電話を切られた

タキにしては珍しい言葉にちょっと驚きながらも

「俺の居場所しらないくせに・・・どうやってくるんだよ」

苦笑しながら切れた電話をぽいっと投げる

しかし、その投げた電話から着信を知らせる音が鳴り始めた

場所を知らないことに気づいたタキが掛けなおしてきたのかと思いディスプレイを確かめずに電話に出る

『もしもし?美希也か?』

予想に反して電話の相手は圭介だった

「圭介?どうしたの?」

『今何処にいるんだよ?今タキが電話掛けてきて、美希也は何処だって煩くてさ』

どうやら俺では話しにならないと思ったのかタキは圭介に居場所を聞くために電話をしたみたいだ

「今、家だよ」

『何かあったのか?』

いつもと同じ調子でそう訊いてくる

きっとタキから何か聞いたのだろう

「ちょっとね・・・嫉妬してるだけ。うん。本当に・・・俺らしくないよね。タキに電話したのはストレス発散に一緒に遊ぼうと思って掛けたんだけど・・・タイミングが悪くて」

泣いてしまったと口にはしたくなくて濁した

『はぁ・・・今からお前の家行っていいか?』

「俺が出るよ。マスターの所に行く」

『出れるのか?泣いて目が腫れてるんだろ?』

タキに泣いていたことを聞いたのだろうそう心配してくる圭介に言葉を詰まらせる

「今すぐには出れないけど・・・ちょっとしたら腫れは引くだろうし・・・」

『まだ涙が止まらないのに?』

「・・・なんで分かるんだよぉ」

言い当てられてしまい、隠すこともせずに声を震わせる

『あのなぁ、散々泣きましたって声をしてるんだからすぐに分かるって』

「圭介・・・」

『話はあとでじっくり聞いてやるから、とりあえずタキとお前の家に行くからな』

一方的にそう言い、通話を切られた

何ですぐに涙が止まらないんだろう

「何で俺がこんなに泣かなきゃいけないんだよ!」

苛々する。近くにあったぬいぐるみを壁に投げつけてみても気持ちは晴れない

「もう・・・嫌だ」

俺ってこんなに独占浴が強くて嫉妬深かったっけ・・・?



枕に顔を埋めて何も考えないようにする

心臓の音がやけに大きく聞こえた






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