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「へぇ・・・知らなかった!でも、意外なんだけどー?美希也が誰かを本気で好きになるなんて」

タキにそうからかわれたが自分でも意外だと思うことだった

聡広と付き合い始めた当初は「少しは信用してみてもいいかもしれない」そう思っての気まぐれの行動だった

付き合うからには、と遊びはやめて純粋に聡広を慕い、自分は彼と付き合うのだから好きになろうと努力した

その結果が今こんな風に自分を追い詰めることになっている

「美希也は何でも一直線だからな。もっと気楽に付き合えばよかったのに」

それこそ夜の付き合いのようにと冗談交じりに圭介がそういう

「でも、付き合っている人にそんな・・・一夜限りの人と一緒のような扱いしちゃやっぱり失礼でしょう?」

「それは美希也の長所なんだけど、俺には短所にしか思えねぇのはなんでだろーな・・・」

ため息をつきながらそういわれるとなんだか気まずくなる

「まぁまぁ、それで、美希也はちゃんと話し合うんだろ?その聡広さんに」

タキが話題を変えてきた

「あ・・・うん。謝るつもりでいる」

「何で美希也が謝るんだよ」

すかさず圭介がそう尋ねてきた

「やっぱり、約束しているわけじゃないけど今日自習室に行かなかったし・・・さっきも態度悪かったと思うしさ」

「でも、それは恋人がいる前で楓くんと親しくしていた聡広さんも悪いと思うけどなー」

今度はタキが反論する

「ほら、やっぱり謝る必要は無いって」

圭介はそう言うが本当にそうだろうか?

「美希也が謝って相手より下手に出たら向こうだってつけあがる可能性があるだろ?今回は自分よりも違う相手に優しく接した高林が悪いんだから美希也は謝らなくていいんだよ」

そういうものだろうか?

「うーん・・・」

普段ならきっと謝らないだろう。それはちゃんと報酬を貰っている相手なのだから、違う相手に余所見しているからと言って謝ってまでこちらを見てもらう必要は無い

でも、今は違う。

悩む俺を見てタキがクスクスと「こんな風に悩む美希也を見るのは初めてだ」と笑う

「そんなに悩むんだったら、まずは嫉妬してるって正直に言えば?その中でもし、相手が謝ったら自分も謝ればいいだろうし、謝らなかったらそれほどたいしたことではないってことでしょう?美希也も謝る必要は無い。そう思えば気が楽にならない?」

このタキのアドバイスにそうしてみるのも良いかもしれないと思い頷いた

「そうしてみる」

コレなら圭介の言う下手に出るというのには当てはまらないはずだ。そして、向こうが悪いと思ってくれたらこちらも謝ることができる

「二人ともありがとう。何か・・・話したらスッキリした」

二人に微笑みお礼を言った

「ったく!勝手に自滅しやがって!それに、何が話したらスッキリしただよ!どっちかって言うと思い切り泣いて寝たからスッキリしたんだろーが」

圭介が手を伸ばし俺の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫で回す

「ちょっと圭介!やめてよ!」

「美希也、本当に心配したんだからね!電話に出たら泣いてるし、それに「なんかもう・・・ダメかも」なんて弱々しく言われたら本当に何があったんだろう?事件にでも巻き込まれたか?!って慌てたんだから!」

そういいながらタキは俺に抱きついてきた

痛いくらいに抱きしめられる

「うわっ、それは本当にゴメン!丁度二人が帰ってきたところで・・・なんで一緒にいるんだろうとか色々考えてたら涙が止まらなくてさー。本当、今考えると何でそんなこと思ったのかも分からないけど」

そういう美希也に圭介とタキは「それを自滅っていうんだろ!」とほぼ声を合わせて言う

「ぎゃっ、ごめんってばぁー」

暫く二人からのスキンシップは止まらなかった






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