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久しぶりに集まった親戚達

今まで自分の帰ってくる場所だった家

長く離れていたわけではないのに、懐かしむ気持ちと共にこの場所は安心できた

朝からひっきりなしに圭介から着信とメールが来ていたがようやく携帯を見ることができたのはその日の夜だった

「もしもし?」

『美希也?!お前何やってるんだよ!今日の試験来なかったし』

「ごめん。法事でさ、今日は休むことになってたんだ」

『法事って・・・高里は来てたぞ?』

「うん。浅木の法事だから高里は関係ないんだ」

だから楓は出席の義務はない

『はぁ・・・家庭の事情ってヤツね』

いつも楓と俺の関係についてはそうやって深いことは教えてこなかった

ただ、兄弟で事情があって離れて暮らしていたという事実だけ

『間違いなく月曜日は追試か。日曜日は遊ぶのやめておくか?』

「嫌だ!俺圭介と遊ぶの楽しみにこの数日間頑張ったんだよ?」

楽しみを奪わないでと頼み日曜日の約束はなんとか破棄されずにすんだ

小言は沢山貰ったけどそれくらいちゃんと聞き入れる

「じゃあ、日曜日にね」

と最後に言って電話を切った

携帯を改めて見ると聡広から昼頃1件だけ着信があった。

それ以降の着信はない。メールもない・・・

1件の着信。それは、俺が学校にいないことを心配して掛けてきてくれたものなのだろうか?

それなら・・・まだ期待できるのかな?

「美希也?夕飯だってー」

従兄弟が部屋に入ってきたことで意識を切り替える

「分かったー、今日の夕飯なんだったー?」

いつも従兄弟と接するように、何も変わらないように振舞う

従兄弟に見えないように携帯を後ろ手に持ち電源を落とす。

今は何も考えなくていいように






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