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思わぬ圭介の言葉に一瞬何を言ったのか分からなかった

「えっ?マジで?」

「マジで。だって美希也のお母さんが作る料理は興味あるし」

そんな理由?と呆けてしまった

「俺も興味ある!家庭料理なんて俺の家には無いからどんな物か知りたいかも」

タキまでそんなことを言う

二人にそんな反応を返されてしまうと押し切ることもできず、結局皆でリビングに向かうことになった

そして今、昨日よりも更に思いもしなかった光景が広がっている

「美味しいっ!美希ママって料理上手いんですねー」

うわーっコレが家庭料理かぁーと騒ぎ、いつの間にか頼子と馴染みながらタキが食べるその横で圭介は向かいに座る聡広に

「先生が生徒の家にいるのって本当に不思議ですよね」

と少し棘が含まれていそうな声で言っている。聡広は「別に個人的な付き合いだから、今は仕事は関係ないよ」と澄ました顔で答えている

その聡広の隣に座る楓は俺に

「何か物凄く賑やかだね。あの人ってこの前コンビニで会った人だよね?」

と訊ねて来る

皆バラバラに話しているからいつもの静かなリビングとは打って変わって今日はとても賑やかすぎる

「そうだよ。俺の友達」

うんざりしながらそう答えた

賑やかな食事の方が楽しい。確かにそうかもしれないけれどココまで皆バラバラになるものだろうか?

「ふーん。楽しそうだね」

行儀悪く銜え箸をする楓をちらりと見て、そう言えば楓の交友関係は知らないなとふと思った

興味が無かったのだから仕方が無いけれど、交友関係に関しては全く噂も聞かない。その他、楓自身のことについてはちょこちょこと噂が聞こえることもあるのだが、誰かと何をしたと言うような噂は皆無だ

「楓にだって仲がいい友達はいるだろ?そいつらと一緒だよ。俺達も」

だから普通のことだって言いたかっただけだ

別に深い意味なんて無かった

「・・・そう。でも、やっぱり俺とは違うからちょっと羨ましいな」

一瞬悲しそうな表情をしてそう言う楓に何か悪いことを言ってしまったかと不安になる

楓って友達居なかったっけ?

そう考えていると隣に座る圭介に軽く脇腹を突かれた

「何?」

圭介を見ると少し怖い表情でこちらを見ていた

ただ何も言わないけど真剣な顔で見ている

きっとさっきの話が触れてはいけないことだったというアイコンタクトなのだろう

軽く頷いて

何事も無かったようにご飯を食べる

ぼそっと楓が何か呟いた

しかし、聞き逃してしまい、楓を見たが「どうしたの?」と今さっきとは全く変わった普通どうりの様子でそう言われると何も言えなかった






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