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トイレから出るとまだ洗面所に聡広はいた

歯磨きは終わっているみたいで、ただ俺を待っていたようだ

勿論、どこかへ行った気配が無かったからまだ居るだろうとは思っていたけど・・・

洗面所に置いてある自分の歯ブラシを取り、ブラシの上にグイーッと歯磨き粉を伸ばす

それを口に含んで磨き始めても聡広は何も言わず、鏡越しに俺を見ているだけだった

「何?」

いい加減に見られていることに嫌気が差し何の用だ?と問いかける

「・・・昨日はあいつら泊まったのか?」

あいつらとはきっと圭介とタキのことだろう

「そうだけど?」

圭介達だけでなく、聡広も楓の部屋に泊まったみたいだけど?と嫌味を言いたかったが今は我慢した

「試験勉強は大丈夫なのか?」

すぐに話題が変わり勉強を話題に出す

遊びよりも勉強しろってことだよね・・・余計なお世話だよ

「大丈夫だよ。別に良い点を狙う必要もないしね」

「良い点って・・・本当に補習を受けるつもりなのか?」

「それでもいいと思っているよ」

折角勉強したんだし、やれるだけやってみるけどね?

でもそれをわざわざ「頑張るよ」なんて、さも必死に勉強してますなんて誇張するつもりもない

「受ける前からそんな調子だと本当に補習になるぞ?折角の夏休みなのに補習漬けはつまらないだろ?楓と一緒に勉強したらどうだ?」

「楓と勉強したら何か変わるの?点数が確実に良くなる?そんなこと『絶対』なんて言えないよね?」

何でわざわざ楓と一緒に勉強しろなんて言うの?楓と勉強するくらいなら圭介と勉強する方が断然実力がつくはずだ

圭介は俺の弱点もしっかりと把握しているから

「俺も勿論サポートするよ。楓と一緒に勉強するのは、一人だと分からないことでも二人だと教えあうことができるだろ?その方が捗るこ

ともあるし競う対象がいて勉強も楽しくなるだろうと思ってそう言ったんだ」

「競う対象ねぇ?それなら俺は圭介と一緒に勉強するよ。お互いその方が捗るだろうしね」

「・・・」

圭介を話に出すと聡広は複雑な表情で黙った

「正直言ってね、悪い点でも良い点でもメリットを感じないんだ。だからどうでもいい。補習は多少面倒だなーとは思うけどさ」

だからやる気も出ないのだと本音を言った

おかしい奴だと思うだろうか?

「メリット、デメリット・・・か」

声が少し堅い

呆れているか、怒っているのだろうか?

口を濯いでタオルで顔を拭く

「ねぇ、高林先生は俺に良い点数を取って欲しい?」

逆に尋ねる。

「勿論」

教師としては模範解答だろう

「何で?」

ねぇ、俺の用意した解答通りの答えを頂戴?

「それは・・・進級にも関わるだろ?」

「本音?」

そんな建前な解答はいらないのに

「・・・あぁ」

欲しい解答は得られなかった






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